コミック書評集

このコーナーでは、私が読んで感動したり、お勧め
したいと思うような単行本コミックの書評を載せて
いきたいと思います。

<その1>「酒のほそ道」

この「酒のほそ道」は、なにかの雑誌に連載されていたものだ
と思うのですが「ラズウエル細木」氏という作者による
「酒」コミックです。

コミックと言っても、作者自身かなりのんべで、酒に一家言
持っており、また取材、元手もかけているという「酒飲みに
よる酒飲みの為のコミック」になっていて、エッセイも中に
はさまれており(コミック:エッセイ・文章=3:1てとこか)
ただの蘊蓄マンガとは又一線画した作品になっています。

酒に関しては全般的で、ビールもワインもあるのですが、
特に日本酒とそれに合う肴の話が多いので、日本酒ファンの
私にはたまらない内容になってます(^^)。実際読んでると
一杯やりたくて仕方がなくなってくるんですから、いかに
作者の思い入れが徹底したものかがわかりますです。

しかも、主人公「岩間宗達」氏は、一見普通のサラリーマン。
したがって主人公の目線と言うか、生活環境は多くの読者と同じ
高さにあります。しかしながら、彼は酒に関しての楽しみかたを
熟知していて、ちょうど読者をガイドしてくれるような展開に
なることが多いわけですね。

一編一編は短いのですが、非常に情報量が多くて、1冊読むと
かなり満腹感があります。これが一気に4冊手に入りました(^^)
しばらく楽しめそうです・・・
←第4巻の表紙
「酒のほそ道」ラズウエル細木著 日本文芸社刊 620円
ISBN4-537-09769-8 C9979 雑誌 52955-92

<その2> 「 Hotel Chapter of ANNEX

表記の作品は、今年春に亡くなった石ノ森章太郎氏が、亡くなる
直前まで連載し続けていた「ホテル」の最終章です。特にこの書
に収められた9編は、彼がHotel Platon ANNEX(別館)へむけて
構想していた幾つかのエピソードを、氏没後、石ノ森章太郎プロ
がその遺志を引き継いで描きつづったもので、ビッグコミック
8/10号で完結したばかりです。

もともとこの「ホテル」シリーズは、コミックとは言え、客商売
の「接遇」の基礎を、「プラトンマインド」という言葉にくるみ
ながらホテルプラトンにおける様々なエピソードを介してところ
どころにちらばめてあり、我々医療機関としても非常に参考にな
る内容で、管理部以上の推奨図書になっているものです。

例を挙げれば、この「ANNEX編」の第3話で、ジェネラルマネジャー
東堂克生が「お客様に愛されるホテルマンであってはならない」
と諭します。一見逆説的で意味不明なこの言葉に、辛辣なホテル
評論家が噛みつくわけですが、その心は「愛されるホテルマンと
なったとホテルマンが自覚した途端に彼らは向上を止めてしまい
ホテルは増上慢となり客は遠のいてしまったという、伝説のホテル
が」実際にあったのだそうです。

そして彼は続けて言います。「お客様に愛されるホテルマンでなく
お客様を愛せるホテルマンになれ」が、プラトンの方法です、と・・・

これは我々にも本当に言えることなのです。患者さんにはいろんな
方がおられます。わけの判らない症状を訴えては毎日毎日外来へ
日参される方、皆の心配をよそに決して酒を止めようとしないアル
コール依存症患者、いくら言ってもまともに薬を飲んでくれない人
・・・いわゆる「嫌われる患者」も多いのですが、我々が地域から
「愛される医療従事者」と増長していればいよいよそう言った
「難しい患者(Difficult Patient)」とは心が通わなくなり、結局
そういった方の健康をも守るという本来の任務を全うできなくなって
しまうわけです。Difficult Patientへの対応のコツはたった一つ、
医療従事者がその患者に愛情をもって接することなわけですが、こ
のことから見てもいかに「プラトンマインド」が我々の日常診療に
役に立つかが判ります。

「ANNEX編」全9話は、どれを取ってもこれまでのエピソードの
集大成とも言える感動的なものばかりです。第6話の最後に
「ここは普通のホテルではありません。プラトンです」
というコピーがありますが、そのように胸を張って言える医療
機関となるために、私たちもこの書を手元において精進したいと
思います・・・


「Hotel Chapter of ANNEX」石ノ森章太郎プロ作 小学館刊 510円
ISBN4-09-184477-4 雑誌 45794-77

<その3>「死体監察メモ」きらきらひかる

この本は、正確には純粋なコミックではありません。監察医
天野ひかるが活躍するコミック「きらきらひかる」の中から
とくに法医学的、あるいは犯罪的に興味深いエピソードを抜粋
して、ドキュメンタリータッチのコミック入りのお話にまとめ
たものです。

コミックの方はあまりたくさん知ってるわけではないのですが
このメモの方を読むと、コミックの方も全部読みたくなって
しまいました(^^;)。そもそも学生時代、推理小説好きからこう
じて法医学教室に出入りするようになり、そこでもらったテーマ
が安楽死問題で、そこからどちらかと言うと社会医学的な方向へ
興味が向いて行って今の病院へ就職する事になったのですが、
いまでも法医学や死体監察などには充分興味が残っています。
この本を書店で見つけたときに思わず手にしてしまったのはそう
言う下地があっての事でした。

しかし、コミックの方をご存知の方ならお判りかと思いますが、
だからと言ってさすがにこの書だけは全ての人にお薦めと言うわ
けにはいかないですね。ところどころに見られるカットに表現さ
れている死体の絵は、どれもコミックである事を差っ引いても
充分リアルで、それだけでも気分を害される方はおられるだろう
と思うからです。でも、この書はコミックよりも文字で表現され
ている分だけ想像力で補えるところがあって、その内容は深いも
のになっていると思います。

映画「らせん」の解剖シーンを全く目をそむける事なく見る事が
できる方には自信をもってお薦めできる書であり、またコミック
「きらきらひかる」であると思います。


ドキュメンタリーレポート「死体監察メモ『きらきらひかる』」
原作;郷田マモラ 作:三局A特別チーム
講談社刊 税別1048円
ISBN4-06-333967-X C9979 \1048E(0)

<その4>「ホテル」文庫判

上で、そのアネックス編の書評を書いた「ホテル」(石ノ森章
太郎作)ですが、先月から小学館文庫でその第1巻から再度出
版されています。総集編が読みたかったのですが、どこの書店
を探してもないところへこのシリーズが開始されたので、それ
ではと先月から集め始めています。

ところがその第1巻を読んでみてちょっとびっくりしています。
もともと途中から、どちらかというと接遇の教科書としてこの
物語を読み始めた私にとっては、第1巻が妙に色っぽい描写が多く
東堂マネージャーもごく普通の人で、ごく普通のホテルの日常
と言った感じの物語であることには違和感さえ感じました。

第2巻を今日買って来ましたが、第2巻では第1巻ほどの色気が
なくて(^^;)若干今に近くなっています。でも、フロントの松田
さんはまださほどデフォルメされていず(慌てモノであるのは
すでにその傾向があるようですが)赤川一兵はようやく登場し
ますが、当然ですが新人のベルマンの設定であり、今とは全く
顔が違っています。しかし、初回からいろいろトラブルにまき
こまれ、それを乗り越えて行くという形はすでにここで出来上
がっているようです。

読み返してみればあの「山口六平太」も、あるいは「美味しん
ぼ」の山岡やゆう子でも、初回に登場したときの顔と今では相
当違っていますから、これが長期間連載による年輪と言うもの
なのでしょうね。

これから毎月楽しみです・・・



第1巻 ISBN4-09-192312-7 C0179 \581E
第2巻 ISBN4-09-192311-9 C0179 \581E いずれも小学館刊


<その5>「Yawara!」第19巻(最終巻)

この「Yawara!」はビッグコミックスピリッツに1986年から約7年間
連載された柔道もののコミックです。このコミックの出だしの頃は、
実物の「ヤワラちゃん」田村亮子はまだ第一線には登場せず、まさ
にこのコミックの主人公「猪熊 柔」が、日本の女子柔道のパイオ
ニア的存在だったわけですね。

このコミックの文庫版の最終章が今回発売になりました。
最終章の舞台はバルセロナオリンピック。ここへ来てコミックと実
物の「ヤワラ」は同期していきます。しかし、実物以上にコミック
の柔ちゃんには難敵が多いのですね。それと、浦沢氏のスポーツコ
ミックのパターンとして必ず日本人の「タカP」的な敵役がいます。
これらを一人一人乗り越え、最後には生涯のライバル、テレシコワ
とジョディとの死闘を勝ち抜いて金メダルを獲得してしまうのです。

同じ作者の「Happy!」が先日最終回を迎えたばかりです。こちらの
方の主人公はプロテニスプレイヤーの海野幸ですが、やはり最後に
は、生涯のライバルニコリッチをウインブルドンで破って無事兄弟
たちの大借金を返済すると言う物語でした。どちらも「水戸黄門」
的な最後ではありますが、やはりこう言ったラストって我々日本人
の感覚に合いますね(^^)。



作者浦沢直樹氏は、こんなスポーツモノも描くかと思えば、一方で
は「パイナップルARMY」「MASTERキートン」といった個人戦闘モノ
にも秀作があり、その集大成が今も連載の続いている「MONSTER」に
つながっています。でも、デテールまで丹念に描きながら、こんな
シリアスな物語にも決して細かいクスグリを忘れない作者のサービ
ス精神は、この「Yawara!」が一番だったのではないかと私自身は思
っています。

「Yawara!」第19巻 浦沢直樹著 小学館刊 C0179 \581(税別)
ISBN4-09-192299-6

<その6>「電脳炎(ウイン版)」唐沢なをき

この「電脳炎」は、ビッグコミックオリジナルに連載中の4コマ漫画で、オ
フィスにあふれるパソコン、OA機器をネタにしてさまざまなギャグをとば
しています。確かに結構笑えるのですけど、ネタによってはちょっと情勢批
判もあるのかななんて思うことも(^^)。

たとえばこんなのがあります。ある電車の中、ノートPCが網棚においてあ
ります。それを見て「おおっ古雑誌のように網棚に!」「ありがたみがなく
なっちゃったんですねぇ」。次のコマではノートPCが街角で100円で叩
き売られ、さらに最後には歯医者の待合室で老人と主婦と子供が揃ってパコ
パコ(^^)。「本当に時代なのか?」という言葉でしめくくられています。こ
れなんぞ、オールインワンで今時どれもあまりスペック的には差がない(し
かもユーザーレベルに比較したら異様にハイスペックな)ノートPCが結構
安く買えてしまう実態をかなりエグッてるように思うんですけどね(^^)



この(ウイン版)てのにも注目(^^)。本についてた腰巻きによると、ウイン
版とマック版があって、中身は90%(当社比(^^)だと)同じとの由です。
ただ、ネタの中にわずかにWindowsユーザとマックユーザにそれぞれ適応させ
る部分があって、このような二部制にしたそうです。これだって結構シャレ
かと思うのですけどね。その差を確かめるためにもう500円だすのはどう
かなぁ・・・(^^;;;

「電脳炎(ウイン版)」 唐沢なをき著 小学館 C9979 \476E(税別)
            雑誌45717-96 ISBN4-09-185796-5


<その7>「きらきらひかる」コミック版第9巻

上でご紹介した「死体監察メモ;きらきらひかる」は、この人気コミックの
いくつかのお話の中で語られる法医学の話題を一冊の本にしたものでしたが、
今回のこれは正真正銘コミック版の第9巻。つい最近までこれが最新刊で、
かつ最終巻かと思ってたのですが、先日旭屋書店へ行ったら第10巻がでてま
した。また買わなきゃ(^^)

さて、この巻には第8巻からの続きのエピソードに加えて、「密室」と言う
中編が収録されています。その前の話で、殺人者の背景にあった哀しい生い
立ちにショックを受け、監察医として死因を明らかにしてもなんの救いにも
ならない自分の仕事の「辛さ」に堪えきれず長期の休暇を取った天野ひかる
が復職して新たな謎に取り組むお話ですが、今回の事件でもまた、頭部を銃
で射たれながらも犯人を庇って現場を密室にした被害者に思い入れが強く、
彼女は監察医の仕事をはみ出してしまいます。

恋人の森田刑事はそれを、監察医としてはひかるがあまりに優しすぎるから、
監察医としてはやって行けないのではないかと思ってしまうのですが、しか
し逆に立ち直った彼女は監察医を続ける決意を森田刑事に告げます。

「きらきらとひかっている真実を知りたいから。
          きらきらとひかる思いをしたいから」

という言葉を最後に投げかけられた森田刑事は、彼女の姿がこれまで以上に
眩しくかがやくことに驚くのです。この言葉が本編の最後に登場するものだ
から、てっきりこれが最終話だと思ってたんですけどね。



ちなみに、私は涙もろいひかるがぼろぼろと涙を流して泣く場面が、本来冷
徹であるべき監察医らしくなくてとても好きなんです。思わず感情移入して
しまいます。たまたま今日はTVの金曜ドラマで「きらきらひかる2」をや
ってましたが、ひかる役の深津絵里さん可愛いけど、あの雰囲気はなかなか
出せてませんね。あれはコミック読まないとそのよさが判らない場面だと思
います。

というわけで、本当にオススメの「きらきらひかる」第9巻でした。

「きらきらひかる」第9巻 郷田マモラ著 講談社 雑誌56121-27
ISBN4-06-328227-9 C9979 定価(本体)505円(税別)

<その8>「あぶさん No.637」ビッグコミックオリジナル99年24号



実際の結果がダイエーの日本一で終った今年のプロ野球ですが、関係者にとっ
ても夢ではありながらほとんど期待していなかった日本一だけに、虚構の世界
でしかし現実とほぼ同時進行していた「あぶさん」の世界は少々賑やかなこと
になっています。景浦安武選手自身のメジャーへの移籍が本当にあるのかどう
かは別としても、この世界でのこの秋の最大の話題は彼の長男景虎君の行く先
でした。

中学卒業時にダイエーに単独指名されながら高校進学し、一番星学園で三年連
続甲子園出場を果たした景虎君がドラフトの目玉になるのは当然。しかし、彼
自身の、親子鷹、一緒にダイエーでやりたいという希望の強さから結局ダイ
エー、阪神、西武、近鉄の4球団のくじ引になって、父親安武が王監督の代わ
りにくじを引く・・・というところで前号のオリジナルは終ってたのです(^^;;)

12/5発売のオリジナル24号は、発行が1999年最後の号です。次号は新年1号と
いうことで水島新司先生どのような展開にしてくれるかと期待していましたが、
ダイエーが引き当てるという大筋の期待を裏切って(^^)大阪近鉄バファローズ
の梨田新監督が引き当てたのです。もっともこれは私自身にはなんとなく予想
通りだったような結果だったのですけど(^^)。

というのも、もし今年ダイエーが優勝していなかったら(そして多分水島先生
もそう思っていたでしょう)すんなりダイエー入団だったように思うんです。
でも、ダイエーが夢かなって優勝してしまった。そうなると逆にこれからの楽
しみは、親子鷹でダイエーを優勝させることではなく、同一リーグでの親子対
決だろうと思ったからです。それに松坂も、また別世界ではドカベン山田もい
る(^^)西武じゃこれ以上スター入れてもしかたがないだろうし(^^;;)ここはや
はり今年力を発揮できなかった近鉄だろうと。大阪だから地元だしね(^^)。

現実世界では、ピカリン佐野投手や小池投手まで放出してしまったバファロー
ズですが、裏の世界でまたとない助っ人を得た来季、ちょっとは頑張ってくれ
るでしょう。景虎君の大阪ドームデビューが待たれますね(^^)。

<その9>「きらきらひかる」コミック12・13巻

1月末のこと、たまたまミスターマガジンを購入したらなんと「きらきらひかる」
が最終回でした。その号の情報では12巻が2月、13巻が3月と予告されていまし
たが、12巻が待てどくらせど発売されず、おかしいなぁと思って旭屋書店まで見
に行ってみたら、なんと2冊が3月9日同時発売に変更されていました。

というわけでさっそく購入したわけなのですが、買って読んでみて、確かに今
までの全11巻と同様にその内容は医学考証もきちんとされていて充分読みごた
えのあるものでしたけど、予想の外れたことがありました。

実はその最終回の最後にひかるのモノローグで
「そうや・・・死んだ人はずっと胸の中にいてるんや」
「うちの胸には・・・」
といいながら胸に手を当ててそっと涙を流すシーンがあるんです。もしかして
彼女のフィアンセの森田刑事殉職しちゃったんだろうか・・・?そう思うとこ
の2巻がとても待ち遠しかったのでした。しかし、実際には最後まで別に森田
刑事は亡くなったりはしません。それどころかひかると森田刑事の関係もさほ
ど進んでないし、森田刑事の過去についてまだ判らないことがあって今後明ら
かになっていくような伏線さえはられています。しかしそれが解明されるエピ
ソードはなく、しかもその最終回はそれまでの流れとはなんだか一線を画した
ような、なんとなくとっぴな終わり方になっているのです。

その疑問は、13巻を最後まで読んだあとにある作者のあとがきで氷解しました。
なんと連載されていたミスターマガジンという雑誌自体がどうも1月で廃刊に
なったようなのです。これがために、雑誌が終わるまでにけじめを付ける必要
があったのではないかと思われます。もしかしたらその最終回の前に挿入しよ
うとしていた長編エピソードがすでに描かれていてあったのかもしれません。
作者自身、続編を別の雑誌で描いてもいいという返事をもらっていると表明さ
れていましたから、そのうちにまた新しいエピソードが始まるのかもしれませ
んね。

それにしても、私がここまでこの作品に惹かれるのは何故でしょう。それはや
はりかつて一度は専攻しようかと思った法医学、監察医という世界の物語であ
ること、しかも先述したように医学考証はあくまでも正確で深く、にもかかわ
らず推理小説としての楽しみが含まれていること、そして最後にはそのような
本来「冷徹」な職業であるはずのひかるが、事件の被害者や加害者に対して必
要以上の思い入れをして、すぐに涙を流して哀しんだり感動したりすること
どが理由として上げられるかと思います。これまで数度TVドラマ化もされて
いますけど、ドラマでは表現しえていない魅力がこの原作全13巻には散りばめ
られています。

私にのまさにイチオシの作品です。ぜひ皆さんも読んでみてください・・・

「きらきらひかる」郷田マモラ著 講談社
 12巻 ISBN4-06-328263-5 C9979 \505E
 13巻 ISBN4-06-328272-4 C9979 \505E


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