コミック書評(2)


<その10>「あぶさん」69巻《美酒への爆進》

あーやっと出たー(^^)
記録的長寿連載コミック「あぶさん」の最新巻がようやく出たのですが、この
巻はホークスの26年ぶりの優勝はもちろんのこと、息子景虎の最後の夏(三
度目の日本一!と思ったのにあにはからんや・・・)や長女夏子の広告デビュー、
そしてあの根本球団社長急逝直後の、根本氏と星野投手のエピソードなど、ホ
ークスファン、あぶさんファンにはまさに垂涎のエピソードが散りばめられた
メモリアルの一冊です。わざわざ表紙にも「'99優勝編収録!」と書かれてい
ますが、我々ファンは(マニア、かも(^^;;))そんなこと書いていただかなく
てもこの巻の価値くらい判ってるんですけどねぇ(^^)。

<−クリックすると大きな絵が見られるよっ

もちろん現実の優勝への道のりとコミックではかなり違っていますが、昨年の
あの当時、ほとんど同時進行して現実とコミックの中で共に優勝に向かって驀
進するホークスの活躍を見るのが楽しかったのを思いだします。この巻を読む
とそのころの感動を、そして毎日の様に携帯電話のスポーツニュース速報に一
喜一憂していた心の高ぶりをまた感じることができました。

そして最後に感動の優勝編。実際にリーグ優勝を決めた時は、日ハムを相手に
2点を先制するも逆転され、しかしそれをまた井口の奇跡的なホームランで再
逆転し、篠原・ペトラザの勝利の方程式で逃げきったという昨年のホークスを
象徴するような試合でしたが、コミックでの相手は大阪近鉄。最後の最後にあ
ぶさんに打席が周り、しかし前の回の守備で肩を傷めていてバットが振れなか
った彼はセーフティバントでサヨナラヒットを決め優勝となるのです。そして
彼がその事をヒーローインタビューで告白して相手投手に詫び(設定では近
鉄・大塚投手でした)、「優勝したかった」「あれしかなかった」と26年間の
心情を一気に吐露するシーンは今読み返してもウルウルもんです。このシーン
だけでもこの巻を買った値打ちがあるというものです(^^)。

先日悪夢の連敗で一気に貯金をなくした後、また5連勝をしている今期のホー
クスは、どうも安定感がなくてイマイチ不安ですけどなんとか3位に踏みとど
まっています。今年も昨年と同じような感動をきっと与えてくれるだろうと信
じています・・・

あぶさん 69巻 小学館
ISBN4-09-184469-3 C9979 \505E

<その11>「最終兵器彼女」1巻 高橋しん



この物語は、現在まだビッグコミックスピリッツで連載中の高橋しん氏初めて
のラブストーリーです。ラブストーリーとは言え、その設定は実は非常に破天
荒なもの。高校生シュウジの同級生「ちせ」は何をやらせてもどんくさくトロ
い女の子だけど、ある秘密を持っている。それは、彼女自身が戦争時において
自衛隊の切り札となる「最終兵器」に改造されているというもの。

時は(多分)近未来。舞台は北海道で、ある日札幌が国籍不明の戦闘機から空
襲を受けるのです。その時、撃墜されていく自衛隊機に混じって、より高速に
敵機の間を飛び回り、次々と撃墜していく飛行兵器、それが彼女でした。その
後もスクランブルで飛び出して行くたびに兵器として成長していく彼女が、わ
ずかに人間に戻れるのが彼氏シュウジと過ごす時間だけだったのです。シュウ
ジの方も彼女の秘密を知っていくにつれて彼女がより愛しくなっていくわけで
すが、ある日大阪が空襲というスクランブルに出撃した彼女はついに人間とし
ては不完全な状態にまで兵器として完成されてしまうというところで、この第
1巻は終っています。

戦争にまきこまれた日本で、しかも最終兵器に改造されたアンドロイドという
極めてSF的なキャラクターを用意しながら、この物語の中心テーマは決して
その兵器の活躍や戦闘場面ではなく、徐々に人間ではなくなっていく少女に寄
せる高校生の純な気持ちであるところが特徴的な物語です。戦闘では一瞬にし
て街全体を破壊してしまう彼女が、シュウジとの関わりで「生きていたい」
「恋していたい」と強く思う。最終兵器で修羅場を次々経験するからこそより
そう思う、そういった彼女の気持ちがモノローグで語られる場面が非常に切な
く哀しい物語でもあります。

作者はこの物語を作る際の参考文献として、戦争状態での人間の心理状態、心
的外傷のありさまを著した書物をいろいろ挙げてくれていますが、このコミッ
ク自体そういった参考文献に充分なりえるものに仕上がっていると思われ、読
んでいるとさまざまな思いが頭の中を去来します。何とも言えない読後感があ
りますので一読をお勧めします。

「最終兵器彼女」高橋しん ISBN4-09-185681-0
小学館 C9979 \505E


<その12>「夢みる機械」「不安の立像」諸星大二郎

諸星大二郎と言うコミック作家をご存知でしょうか。「孔子暗黒伝」「暗黒神
話」「妖怪ハンター」などがよく知られたミステリー作家ですが、もともとは
この2冊に収められているような、日常の中にひそむ恐怖を捉えてたくみにス
トーリーにまとめるのが得意な作家です。



表題作「夢みる機械」は現実に疲れた人々が自分の替わりのロボットを世間に
置き、自分は睡眠機械に入って自分の望み通りの夢をみて一生を過ごさせる
「ユートピア配給会社」に身を寄せて行くと言う近未来SFですが、主人公の
子供が気がついたら自分以外の人間はすべてロボットになっていたという恐怖
物語です。また「不安の立像」はもっと奇妙な物語で、通勤電車の中から毎日
線路沿いに立っているのが見える黒い人影に興味を示す一人のサラリーマンが、
その正体を突き止めようと追跡してみてそのおそるべき事実に到達すると言う
恐怖憚。後者は特に通常のSFやスリラーにはない「奇妙な味」の恐怖です。

最近は伊藤潤二のスリラー(「富江」「うずまき」などに代表される)が映画
化などされてもてはやされてますが、あのような直接的な恐怖もいいですけど、
諸星大二郎のこの初期作品のようなスリラーもまたいい味だしていると思いま
す。恐怖コミックファンの方なら一見の価値ありと思います・・・

「夢みる機械」 ISBN4-420-13750-9
「不安の立像」 ISBN4-420-13748-7  作者 諸星大二郎 創美社
 双方 781円+税


<その13>「ストッパー」水島新司


海のむこうのアメリカ大リーグでは、毎日のようにイチローの活躍が報じられ
ていますね。イチローもさることながら、マリナーズ躍進の原動力のもうひと
つがストッパーの佐々木です。彼がすでに4月9セーブ目を上げ、月間セーブ
数の大リーグ記録に迫ろうとしています。その昔、あのセーブ王江夏にたいし
て最初に与えられた称号と言われるこの「ストッパー」という言葉ですが、お
そらくそれに触発されたと思われる水島新司さんのコミックが表題の「ストッ
パー」です。

今月文庫版の1,2巻が発売され、7月までかけて毎月2巻ずつ、計8巻が刊
行予定なのですが、水島野球漫画をほとんどチェックしたと思っていた私もこ
のシリーズは初耳でした。インターネットで調べてみたら1988年刊で、でてく
るのも大洋、阪急、南海などひと昔前の球団、そして「野球狂の詩」で有名な
東京メッツ、そしてこのストーリーでのメインな球団は「大阪ガメッツ」・・・
見事にひと昔前の水島ワールドなんですねぇ。

特に「野球狂の詩」メンバーは水原勇気を除いてほぼ総出演です。これは今読
んでも楽しめるのですけど、発表当時は野球狂が終わって数年目でしたからき
っと懐かしさもあって水島ファンにはウケたことでしょうね。しかも細かくチ
ェックすると、主人公三原心平の母親はあぶさんのうわばみお袋さんだし、ガ
メッツのオーナーは「ドカベン」に出て来た南海権左だし、ライバル渡大介は
明訓の元監督土井垣将だし、と、キャラクターがカブるカブる(^^)。

それに主人公心平の決め球が超遅球ハエドマリ(「ドカベン」不知火の必殺ワ
ザ)と、高々と放り投げる山なりボール(「ドカベン」犬飼知三郎の武器)だ
ということになれば、これはもうプロ野球版「大甲子園」ともいうべき水島野
球漫画総集編なのです。なんで私がこれを知らなかったのか、不思議なくらい
です(*_*)。

内容は読んでのお楽しみ、ということで、とりあえずのご紹介でした(^^)/

「ストッパー1・2」水島新司 講談社漫画文庫
ISBN4-06-260944-4 C0179-\650E
ISBN4-06-260945-2 C0179-\650E


<その14>「MAKOTO」郷田マモラ

郷田マモラ氏はあの「きらきらひかる」の作者です。「きらきらひかる」が、
その連載雑誌「ミスターマガジン」の廃刊により連載中止を余儀なくされ、取
り決めにより何年間かは「ひかる」を他の雑誌には描けないそうなのですが、
この「MAKOTO」はまさに同じ国立O大学(これは多分私の出身校だっ!)
の法医学教室の監察医の世界を舞台にしているということで、ある意味「きら
きらひかる」の兄弟分(この作品群は1999年〜2000年の別冊マグナムに連載さ
れたもの)として楽しめる作品です。

もちろん「きらきらひかる」にも特徴的だったその正確な医学考証はこの作品
でも踏襲されていますし、やや控えめではありますがやはり司法解剖の場面の
描写は気の弱い人にはオススメしづらいくらいのものです。ただ、この作品に
特徴的なのは、主人公の監察医白河真言(まこと)が、監察医になって以来ず
っと幽霊が見えるようになったという、少しオカルト的な設定です。彼が解剖
室や殺人、あるいは事故の現場に現れる幽霊の姿を見て、その事件に疑問を抱
き再度調べなおす事で真実に到達するというパターンで毎回のエピソードが語
られていきますが、その根底には先立たれた妻が自宅に幽霊として現れる事の
真相に到達できないという悩みが隠れているのです。

物語の展開は少し特殊ですが、事件の解決は決してオカルト的なものではなく、
論理的に正確な法医学的検証に基づいて行われます。つまり、純粋な本格推理
ものとしても楽しめるわけですが、一方作者のサービス精神で、そのところど
ころに「きらきらひかる」の登場人物たち(天野ひかる、森田刑事、姉小路監
察医など)が顔を出してくれるところも「きらきらひかる」ファンにはたまら
ないところですね(^^)。この第1巻は本年3月の刊行ですが、連載雑誌の発行
頻度からいえば第2巻はまだ先かも知れません。でも今から続きが楽しみです・・・

「MAKOTO」 郷田マモラ作 講談社モーニングKC
 ISBN4-06-328742-4 C9979 \505E 定価本体505円