コミック書評(3)

<その15>あぶさん74巻「残り酒」 水島新司



水島新司さんの超大作あぶさんもついに74巻を迎えました。「サザエさん的」に
その中では時間の流れのない漫画の多い中で、水島漫画はあぶさんといいドカベ
ンといいちゃんと時間の流れがあり、そして登場人物は年齢を重ねていきます。
あぶさんがプロデビューして28年、本人の年齢はすでに54歳のハズ。54歳の現役
選手てな設定もスゴイけど、その息子もプロ入りして記録を総ナメという投手に
なっている。その中で、あぶさんはこの巻ではこれまでにない大スランプに陥っ
ているのです。

当然年齢による衰え、限界説がささやかれる中であぶさんは、王監督に言われて
酒を止めてみることに。しかしそれはかえって墓穴を掘ることになり、ついには
最悪の状態で息子と対決するはめになるのですが・・・

息子景虎との対決で、頭部への危険球に目をさまされ、酒しぶきで気合いを入れ
て復活の大ホームランを打ってしまうシーンは、ずっと「息子にもいつも指導的
立場にいた」あぶさんを見慣れて来た私たちあぶさんファンにとって非常に新鮮
だったし、また感動的でもありました。いつかは息子に完全に越えられる日が来
るだろうけど、こうして息子に刺激されてあぶさんの選手寿命はまたいくらか伸
びたようです。ファンに取ってはまだしばらくは安心できそうですね・・・

あぶさん74巻「残り酒」 水島新司作
ISBN4-09-186144-X C9979 \505E 雑誌45701-44 小学館

<その16>あぶさん77巻「獅酒舞」(2003/3/5)


本当に久しぶりにコミックの話題です。表記の「獅酒舞」は、あの「あぶさん」
シリーズの77巻目。なんと主人公の景浦安武はすでにプロ30年目で56歳という、
とんでもない鉄人選手となっており、息子の景虎も近鉄入りしてはや3年目で、
親子で3年連続オールスターにファン投票1位で選ばれてるという、まさに
「プロ野球SF」とでも言うべき世界に到達しています。

主人公は歳を取らないというコミックも多いですけど、この作品の中では実際
のプロ野球の世界に非常に近いところで時間が流れているので、実際に起きた
事件などもふまえているところが見どころの一つでもあります。例えばこの巻
の中では、急逝したパンチョ伊東氏のエピソード、あるいは引退を決めた秋山
選手のこと、そして阪神に揃って入団した星野監督と田淵コーチも登場して花
を添えています。そう言った人たちの登場するエピソードはその一つ一つが感
動に満ちあふれていて、あぶさんが絡むところはフィクションなんだと判って
いても涙が出てくるような場面も多いのです。

一方ではこの作品の中だけでの登場人物にも、さすがに30年目となるといろい
ろ変化も起こってきます。景虎がスランプを乗り越えてノーヒットノーランを
達成したり、あぶさんが大のお気に入りの超高齢作家武藤ワカの113歳の誕生
日のエピソードがあったり、あぶさんの義父の店「大虎」にいつもお酒を納入
している酒屋「升幸」の主人「ボン」に後継者ができたり・・・、これまた感
動的な話が続くんです。

「あぶさん」を長いこと読んできましたけど、この巻ほどいろいろ泣けてしま
った巻はなかったと思います。もうすでに記録を残すには歳を取りすぎてしま
ったあぶさんの球界晩年にはこういった感動的なエピソード群が似合うのでし
ょう。でも、もうひとつは、読んでる私自身が歳を取ったということなんでし
ょうね・・・

あぶさん77巻「獅酒舞」 水島新司作
ISBN4-09-186147-4 C9979 \505E 雑誌45701-47 小学館