My Opinion Back Number
(その1)
1997/9/1、ついに医療保険改悪が実施されました。特に今回の改悪では健保本人の負担増が大幅で、今の日本を支えている「働く人々」の健康が脅かされる結果になっています。
しかしこれにとどまらず、政府厚生省は、次なる改悪のターゲットとして高齢者と慢性疾患患者を狙っています。70歳以上の老人の1割定率負担、慢性疾患医療での定額制導入がそれです。また、何と特定疾患(難病)の患者さんにさえ一定率の医療費を負担させるとしています!
医療改悪の嵐、どこまでやれば気が済むんでしょう!
今回の医療制度改悪案の内容については、保団連(全国保険医団体連合会)のHPに詳細が載っています。
→保団連の改悪案紹介HP
→Doctor's Netホームページ
My Opinion
この9月に医療改悪が実施されて以来、医療現場ではいろんな不条理に直面して
来ました。その中で、診療所が潰れないように守りながら一方で「患者さんの立
場に立ったよい医療」を追求する民医連院所は、さまざまな矛盾と闘いながら日
夜診療を行っているつもりです。
大阪民医連でアンケートを取ると、とにかくさまざまな事例が上がってきている
そうです。そのほとんどが、今の制度では絶対に国民の健康を守れない事を実感
させるものばかりです。今日(1997/10/30)私の外来に来られた患者さんの事例は、
そんな中でも、もうここまではらわたの煮えくりかえる思いしたのは久しぶりだ
というほどの「えげつない」ものでした。
彼女は72歳の女性ですが、阪神大震災の被災者です。あの日、自宅に生き埋め
にされて48時間頑張ったあと救出され、うちの病院へ転送されてクラッシュ症
候群の診断にて私が主治医で治療しました。運よく回復し、現在も東灘区から通
院されてきています。
70歳超ですから当然老人医療で本来無料ですが、今回の医療改悪で自己負担が
増えたと言います。事実この方の収入は、2ヵ月に一度入る20万強の厚生年金だ
けのはず。なぜ自己負担があるんだろう、自己負担金免除になって当然の生活な
のにと思いMSWに調べてもらったのですがやはり行けるとの由。その言葉に力
を得て、2週間前に彼女に、行けると思うから区役所で手続きしてみたら、と助
言しました。
2週間ぶりに本日来られましたので、どうでした?と聞くと、なんと駄目だった
と。なんで?と彼女の話を聞いてみて、私は心底アタマに来ました。横で見てい
たらてっぺんから煙吹いたかもしれません。彼女が言うには
「区役所に行って書類を出したら、お役人がごにょごにょ読んでいて、急に私の
方を向いて
『おばぁはん、あんたホンマに1回500円くらい払えんのかいな』
というので、私も気がいいからつい
『まぁ500円払えん事もないけど・・・』
と言ってしまったの。そしたら
『ほなら他にも金のかかることが多いんやからやめといて』
といって断られちゃった・・・」
との由!!!。・・・うーん、書いていてまた腹が立って来た。
彼女の人のいいのをいいことに、無茶苦茶な理論で当然彼女にある権利を踏みに
じった、この役人の行動は絶対に許せません!何でこんな役人が、まだまだ復興
が完成していない神戸市に存在するんでしょう!一方ではたかだか国会議員25
年勤続しただけで、100万もする肖像画を飾ってもらい、30万/月もの「交通費」
を血税から受け取るものがいるというのに!!
彼女に関しては件のMSWが再度神戸まで出向いて援助するとの由でした。それ
にしても神戸市の市政は笹山再選になっちゃいましたからまだまだこんなお寒い
話が続くのでしょうね。
まったく、もぉ・・・
(この内容はFaxで関西TV「モーレツ怒りの相談室」へ送付しています)
午前の診療所での診療を終え、病院へ移動して病棟でカンファレンス
をしていると、MSWが上がって来てこう言うのです。
「先生、ついに特定疾患(いわゆる難病です)の人にも自己負担が
かかるようになります。ただ、重症の人には、診断書を書けば
免除される制度もありますので、NさんとYさんの診断書をお願い
したいのですど・・・」
なにっついにきたかって感じでした。あまり一般には知られない
うちに深刻な事態は確実に進んでいたようです。Nさんの病気は
「再生不良性貧血」、そして、Yさんは「筋萎縮性側索硬化症」
ともに難病としては結構有名なものです。それで条件(免除条件は
表になって提示されてるのです)を検討してみたのですが・・・
「Yさんは完全な全介助だし、両手両足動かないのだから当然行け
ますけど、Nさんは今治療に反応して非常に状態がいいからダメ
ですねぇ・・・」
こう言ってしまってから重大なことに気がつきました。ある程度
治療法のある難病(この再生不良性貧血みたいに)は、治療に反応
して状態が良くなることはいくらでもあります。だけど、病気が
治ってしまったわけではないのです。だから死ぬまで治療は続け
なければならないのに、この状態のいいときには治療費の負担が
発生するわけです。
ここで、医療費に困る状態が発生して、患者さんが治療を中断し
てしまったら状態が悪くなります。当然です。こんなことは考え
たくありませんが、患者さんがわざと治療中断して、病気を悪く
して医療費免除をしてもらおうと画策するなんて事態も起こるの
ではないでしょうか。このNさんならもしかしたらやりそうな、
そんな生活状況なのです・・・
それでなくともこの事態、まさに金の切れ目が命の切れ目という
言葉通りの現実なのではないでしょうか。大阪府ではついにこの
秋から65歳からの老人医療に関しても厳しい状況が始まります。
今の保健行政に明るい未来はとうてい期待できません・・・(;_;)
昨夜(98/7/30)遅くののニュースで、あの横山ノック知事が
なんやらややこしいことを発表しておりました。大阪府の
ホームページにも行って内容確認して来ましたが、上記の
「素案」かなり府民に負担を強いるもののようです。
今の大阪府の財政は、ほとんど破産寸前だとか。だからその
財政再建の為に、絞るところを絞り、取るべきところは取る、
ノック知事の言葉を借りれば「府民の皆様にも若干の痛みを
分かちあっていただく」というものらしい。でも、若干では
なさそうなんですねこれが。
だいたい毎年の財源不足は5000億円にものぼるそうで、これ
を「法人二税の落ち込み」「人件費、公債費などの経常経費
の増大」が原因と決めつけ、収入増の為に「地方交付税や
減収補てん債」をはかり、一方人件費抑制の為に、一般行政
部門で2200人、教育部門では4800人の人員削減、公務員の
2年間定昇ストップを予定しています。教育分野への影響は
これだけではなくて、私学授業料助成の逓減、私立幼稚園費用
助成の廃止、そして極めつけは府立高校入学金を現行5500円から
なんと10倍の55000円へと引き上げるというもの。
一方医療保険分野では、すでに今年11月より実施予定されて
いる65歳老人医療制度の廃止、母子家庭、障害者児医療の助成
の見直し(と言うことは廃止か減額です)など、数え上げれば
きりがありません。もう目を覆うばかりのひどさです。
(なお詳細については「赤旗98/7/31」記事の切り抜きを
スキャナで読み込みそのまま下記にアップします)
しかも、明らかに失敗のりんくうタウン、国際文化公園都市など
の大型プロジェクト、関西空港二期事業などはまったくその
計画縮小も考慮されずそのまま推進されるそうです。財源不足
の原因として、府民の血税をドブに捨てたような泉佐野コスモ
ポリスの負債などはまったく触れられておらず、結局「取りや
すいところからだけ取るようにした」という態度は見え見えです。
もうこの計画を昨夜ニュースで聞いたときには正直言って頭から
湯気がでる思いでした。いったいノック知事はどこまで府民に痛
みを味わわせれば気がすむのでしょうか。あの高い高い府民税は
なんのために払っているのでしょうか。昨夜のニュースでもどこ
かの大学の教授が「こんなことではとても税金払うわけにはいき
まへんな!」と言っていましたがまったく同感です。
いよいよノック知事には愛想がつきましたですよ。
こりゃー、「ノック」アウトしなきゃ・・・
うちの病院の医局でも先日、全科医局会で学習会を行いました。
実際のところ私も、ケアマネージャのことくらいしか判っていな
かったようです。現行で検討されている内容の矛盾点、運用される
際の危険性などがその学習会で明らかになっていました。
制度を簡単にまとめてみると、40歳以上の国民から強制的に保険料
が徴収され(平均2500円/月額)なおかつ、介護を受けたいときには、
申請→判定→認定という段階が必要な上、利用料1割がかかると
いうもの。今の社会保険制度、国民健康保険制度と通ずるところが
あって、40-64歳では事業主や国が保険料の半額を負担するが、65歳
以上では全額負担になるわけです。
結局これがそのまま矛盾点に結び付いています。今の国保制度と
同様に、低所得高齢者では保険料が払えないことでこの保険から
排除される危険性があります。それどころか未納者には厳しい罰則
が適用されるとの由。方向が全く逆ではないでしょうか。
利用料についても同様のことが言えて、結局低所得者ほど負担の
多い制度になっているわけです。
一方、「保険あって介護なし」といわれるように、この制度を
支える裏付けの介護サービスがほとんど目標に到達していない
のも大きな問題です。そこでその不足分が、この介護保険以外に
民間会社の「介護保険」、つまり営利企業にゆだねられることに
なるわけです。介護を金で買うことになってしまうわけで、いよ
いよ低所得者層は介護から見放されていくことになるのです。
くしくも梶山官房長官が発言したように、今回の介護保険制度は、
健康保険制度の新しい財源としか考えられていないわけです。
おまけに、今回の制度では、家族から「介護申請」が出された
ものを受けてそれを「役人が」判定、審査するという手順がある
わけです。これまた役人天国日本では、汚職の温床となりうる
のではないでしょうか。
私たち民医連の立場としては、決して介護保険制度そのものを
否定し反対するものではありませんが、やはり国の責任を追及
し、営利産業に頼らず、すべての国民が等しく医療、福祉、介護
を受けられるようになるような、真の意味での公的介護保険と、
社会保障サービスの充実を、患者さん、組合員さん達とともに
要求して行きたいと思っています。
民医連の立場と要求はこのパンフレット P7へ
(絵をクリックしてください)
My Opinion ←怒れるタミさん
介護保険・・・こんなこと知ってますか
西暦2000年4月から施行される介護保険法ですが、診療所でも
今日はいろいろ参考書を見ながら学習会を行いました。そこで
いろいろ学んだ内容の中で、特に気になったところを・・・
その1;介護保険法の第1条
この法律は・・・保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を
行うため、「国民の共同連帯の理念に基づき」介護保険制度を設け・・・
「」は私が付けました。つまり、はじめから福祉に関しても国の
責任を曖昧にして国民の自力自助を基本にすることを法律で謳って
いるわけです。まぁこれはともかくとしても・・・
その2;申請認定までの期間・認定条件・調査員
介護保険法の元では、介護が必要な患者が発生した場合に、まずその旨
を「申請」し、申請内容に基づいて市町村から「調査員」が申請者宅へ
派遣され、80項目以上の「調査」を行い、その上で「介護認定審査会」
へかけられ、そこで二次判定を受けて初めて「介護給付の検討」に入り
ます。この決定までの間隔は最長で30日、その間の介護などに必要な費
用は当然自己負担であり、しかもその時期を過ごしても、必ずしも申請
が決定認定を受けるとは限らないのです。
その一つの原因は「高齢化することで要介護状態になった場合」のみを
対象にしているので、40〜64歳においてはよほどの特定疾患でない限り
受給はできないようになっているということ。
また、「調査員」はあくまで行政からの派遣員ですから、医療従事者では
ない可能性が高く、医師や看護婦の所見や見解とは当然異なりますので
状態の過小評価が起こりえるということです。例をあげれば、患者さんが
誤嚥をさんざんしながらでもうがいを形だけできれば、調査員は「うがい
可能」と判定しますが、医師や看護婦は誤嚥するならうがいなどさせられ
ませんから「うがい不可」と評価します。これは一例ですが、結構要介護
か否かを判定する上で結構大きなウエイトを占める項目に、医療現場を
知らない方の主観で判断されては困るものが多いと思います。
その3;罰則がある!
介護保険は原則ほぼ強制的な保険加入ですから、今の国民健康保険法に
似たところがあります。保険料は40歳から取られますが、この間ちゃんと
納めていても、いざ高齢になった段階で滞納すると、途端に「罰則」が適
用され、必要な給付を制限されてしまいます。これはまさに今の、健康保
険料を払えないからといって保険証を取り上げる国民健康保険の実態に通
じるものではないでしょうか。
まだまだあるのですが、この辺でアタマが痛くなって来ました。このまま
導入されると、大変なことになりそうで・・・
「日本初の脳死臓器移植、でもこんな報道って!」
1999年2月28日夕刻、TVの臨時ニュースに、阪大病院で心臓移植手術が開始
されたとの報道がありました。高知赤十字病院で「脳死判定」を受けた患者さんから
取り出された心臓を阪大からスタッフが受け取りに行ったのです。その他に肝臓は信
州大学病院へ、腎臓は国立長崎中央病院と、東北大学へそれぞれ送られて行きました
・・・
これは確かに日本の医学にとってまさにエポックメイキングな、歴史にのこる事件で
す。あの和田心臓移植事件が、移植医療全般を「悪」のイメージにしてしまったこと
を考えれば、これからは移植医療も積極的に推し進められていくことでしょうし、
1999年2月28日と言う日が日本の医学史に残る日であることには違いありません。
ただ、夕刻からのまるで「実況生中継」のごとくの報道にはどうも嫌悪感を禁じえま
せん。高知赤十字病院にしても、阪大にしても、マスコミへのサービスが過剰ではな
いかと思えてならないのです。たしかにドナーもレシピエントもその患者情報は全く
明らかにされていませんが、これらの「医療内容」がその患者さんたちの「医療上の
秘密」であることには違いないのではないかと言う気がするのですが・・・
それにちょっと感情的になることを許していただきたいのですが、阪大病院で心臓移
植手術を受ける患者の病名が拡張型心筋症であることを聞いて、私は思わず涙してし
まいました。かつて、私がまだ4年目のひよっこ医師の頃担当した同じ病名の患者さ
んを思い出してしまったからです。
心不全がひどくてベッドから満足に起き上がることもできなかったMさんは、私の結
婚式を翌日に控えたある土曜日の朝に、病棟婦長が話しかけようとしたちょうどその
前で突然不整脈発作を起こして心停止、そのまま永眠されたのです。この患者さんも、
こういった移植医療が早くから実現されて普通のことになっていたなら死なずに済ん
だかもしれないと私はよく思っていました。しかし、彼女の残された夫は、今私の特
診へ通院されているのですが、そのことには否定的です。
「あいつは、自分の命が短くなってもいいといって子供を無理して産んだんです。
心臓移植のチャンスがあっても、あいつはきっと断ってるでしょう。
そういうヤツだったんです・・・」
と彼は言っています。つまり、こういう選択もあるということです。臓器提供のLiving
Willをもった患者さんの意志、自分に対する医療として心臓移植を受けようと決意し
た患者さんの意志、それぞれが個人の大事な選択であり、軽々しく公表されていいも
のだとは思えないのです。
この事件の波紋は、今後もいろいろ報道されることでしょう。
脳死による移植医療がいいか悪いかと言う問題以前に、ぜひこの報道からこんな風に
考える医師もいるのだと言うことを判っていただきたいと思います。
大阪府民に後悔させないように・・・
1999年4月11日、統一地方選挙で横山ノック氏が再選されまし
た。私たち民医連が政策協定を結んでいたあじさか真氏が力及
ばなかったのは残念ですが、あれほど差がついていてはやむを
得ないところです。しかし、得票数、得票率からいえば、知名
度ではまったくノック氏にかなわない状態でありながらよくと
れた方だと思います。
ノック氏は今回の財政再建プログラムが府民に評価され、実行
GOの審判を受けたと受け止めているようですが、共産党以外
の政党が政策をしっかりと出せず、結果として候補者の擁立が
できなかった時点で、政策論議というより人気投票の形になっ
てしまったと言うことは否定できないと思います。府民に痛み
を分かちあって貰うというノック氏の主張を本当に府民が10
0%理解して受け入れたのかについてはまだ我々としては懐疑
的なのですが、たとえば府立高校の入学金の値上げ、府職員の
リストラなど、直接府民に影響がない(ように見える)ことは
「自分のこととして」受け止めて貰えなかったのだろうと考え
てます。
しかし、老人医療費無料化への逆風は、そのまま将来の医療へ
の冷たい風当たりの前兆として考えられます。老人の次にすで
に医療費の面で逆風を受けはじめたのは特定疾患(難病)医療
ですし、この次が障害者医療であることは目に見えています。
4年前ノック氏が公約として掲げた「弱者の視点での府政」が
守られていないばかりか、弱者切り捨ての方向へ向かっている
ことを知っていただきたいと思います。これも健常者にとって
は「関係のないこと」と言ってしまえばそれまでなのですけど
「いずれは自分の身に降りかかること」なのですから。
我々としては、今回の選挙で政策として訴えて来たことを、今
後も患者さんたちのご理解を得ていく努力をしながら可能な範
囲で対府交渉などに活かしていく決意としています。ノック氏
にはせめて初心を少しでも思いだしていただき、弱者切り捨て
ゼネコン大企業重視の「冷たい府政」をいくらかでも改善して
いただけることを期待します。それが、今回の選挙の結果で大
阪府民に後悔させない新知事の責任かと思います。
My Opinion 戦争への足音が・・・
ついにというか何というか・・・
気がついたら成立していたと言う意味では、あの介護保険法とよく似た成立の仕方をしましたね>新ガイドライン(周辺事態法)
さきほどニュースで、まったく対照的な二人の首相経験者の談話が紹介されていましたが、ロンヤスの中曽根氏が肯定派(まだ足りんとぬかす)であるのは当たり前として、あの「福眉毛」村山富市氏の談話が印象的でした。彼首相の時は頼りなかったけど(^^;)今ははっきりと「国民の大多数がその内容をほとんど判らない状態で成立させてしまったのは大いに不満である」と態度を明らかにしてくれました(せめて首相の時にそこまでの態度してくれていたら社民党も没落しなかったろうにね)。
成立して早々からアメリカにすりよって軍隊を大きくするような愚挙はまさか自民党はしないとは思うけれど、この法律は運用次第では完全に憲法9条を脅かす存在になるものです。我々医療人の立場から言えば、強制的にアメリカの戦争傷威軍人の医療に協力をさせられることになることが危惧されます。
ここは難しいところなのですが、我々は、生命を脅かされ健康状態を阻害されている人にたいしては、その原因にかかわらず全力を尽くしてその人の療養に当たる気持ちは持っています。戦争の傷威軍人であってもその気持ちは変わりません。しかし、もし戦争状態になって、その患者を治療することが再度その人を戦争の場に送り出すことになるとしたら、それはまったく我々の本意ではなくなります。しかしこの状態に強制的に協力させられる可能性があるわけです。これは医療人としては堪えられない苦痛です。
それにもっと原則的なことを言えば、生命を守るべき医療人としては、どんな理由であれ多くの生命を一度に奪い、多くの人々の健康を害する戦争状態そのものに絶対賛成できません。「周辺事態」であろうがなんであろうが、私がこの法律成立に絶対反対の姿勢は崩せないと思っています。
しかし、残念ながら法律は成立してしまいました。今後はこの法律の運用に対して厳しい目で監視と評価をしていくのが国民の努めであろうと思っています。
My Opinion 1999年終戦記念日に寄せて
今日8月15日は終戦記念日。私は例年のごとく、この日は仕事をしています。
今年はたまたま日曜日にあたりましたけど、他の曜日にあたる年もこの日は仕
事をしていることが多いです。
13日夜、御幣島診療所の夜診をやっていると、地域の長老の一人がやって来ま
した。古くからうちの病院の設立に関与して来られた方で、友の会の名誉顧問
です。終戦の頃は反戦運動で非国民とよばれ、シベリアに送られかけたという
のが彼の口ぐせなのですが、彼が来て言うには、終戦記念日だなんてとんでも
ない、この日は敗戦記念日とよんで、日本国民があの戦争でどんな目にあって
きたのかを忘れない日にするべきだと主張します。私もその辺尤もだといつも
思うので、私自身この日は敗戦記念日と呼ぶことにしているのですが、敗戦ど
ころか昨今は戦争があった事実さえ風化しているような事態になりつつありま
すね。本当に恐ろしいことだと思います。
この間、本来は自民党がぼろ負けして民意が大きく反映されたはずの参議院で、
なんとも不思議なことに自民党の思惑がどんどん通って行っています。その一
環で、国歌国旗法も、盗聴法も、そして国民背番号法もあっと言うまに成立し
てしまいました。この3つの法律、並べてみたら完全に戦前の匂いがするなぁ
と思うのは私だけでしょうか。そのうちに自自公三党が大政翼賛会と名乗り出
すのではないかと思って背筋が寒くなる思いをしています。
私たちがせっかく通らずにすんで来た道なのに、またいつか先人が歩いた過っ
た道へ行かされようとしています。私たちの子供たちのために、なんとか元へ
戻して行ってほしいと切に願って、終戦記念日によせてのメッセージとしたい
と思います・・・
My Opinion
今回のノック知事の醜聞は、彼を選んだ大阪府民200万人の期待を
裏切り、選んだことを後悔させたという意味で非常に罪深い問題で
あったと言わざるを得ません。本年4月の統一地方選挙のあとで、
横山知事が200万票以上を獲得して当選した時、我々はこの場でこの
ように表明しました。
************
ノック氏にはせめて初心を少しでも思いだしていただき、弱者切り
捨てゼネコン大企業重視の「冷たい府政」をいくらかでも改善してい
ただけることを期待します。それが、今回の選挙の結果で大阪府民に
後悔させない新知事の責任かと思います。
************
しかし、この公式表明の直後にあのスキャンダルが明らかになりま
した。当初我々もあの醜聞には結構ウラがありそうな印象を持ってい
たのですが、最終的にこんなにオモテウラのない判りやすい、しかし
なんとも救いようのない結末になるとは思いもよりませんでした。
今回の事件で大阪府民は、全国的に、いや全世界的に赤ッ恥をかか
されたことになりました。しかもこんな状況にあってなお、一部のマ
スコミは西川きよし氏だとか上岡竜太郎氏だとかの出馬を煽るように
書き立てています。本人たちが出馬を正式表明したのならまだしも、
そういったものが何もない状態でのそんな記事は大阪府民を完全にバ
カにしたものとしか捉えることはできません。しかし、これは自業自
得です。あんなノック「痴事」を選んでしまった府民自らに責任があ
るのです。
来年早々に行われる知事選挙では、衆議院選挙も間近なので前回の
ような各党相乗りにはならないでしょう。我々は前回同様、革新系の
候補としてあじさか真さんを後援しますが、せめて全ての政党が
政策論議を前面に押し出した候補者をたて、真摯な討論をした上で府
民に選んでいただく形になって欲しいものだと思います。それがせめ
てもの全世界への大阪府民の「みそぎ」と言えるでしょう。
今度こそ、府民のための政治を取り戻しましょう!!
MY Opinion
(2000/2/6記)
今日は大阪府では横山ノック前「恥事」の辞職に伴う府知事選が行わ
れ、京都では任期満了に伴う市長選挙が行われました。いつもながら
の開票率数%での当選確実速報は気にいりませんが、大阪京都とも
「自自公」+民主などの例によっての「多党相乗り」候補が当選を果
たしました。
大阪は初の女性知事の可能性ということで、自民、自由、公明に加え
て民主や連合、女性団体までが相乗りとなったわけですが、財政危機
の立て直しが危急問題として迫られている中で太田知事ははっきりと
「受益者負担を考えざるを得ない」と府民への負担を口にしています。
つまり、今後も老人医療の負担増(65歳老人医療の廃止)や府立高校
の学費の値上げなどが「公約として」前提になったわけです。この公
約に向けて、中央政界では完全に対決しているはずの自自公と民主党
が「政治協力して」いくこととなったわけで、民主党が今回の府知事
選を通して非常に微妙な立場に立たされているのではないかと思いま
す。また京都でも、中央と地方は違うと言いながら民主に加えて社民
党まで相乗りになっています。いったいこうなると、中央での野党の
やってることはいったい何なんだということになりかねません。
「共産党の知事、市長を阻止する」
というのが結局合い言葉になったようですが、これで本当に真の民主
主義が実現していくのでしょうか。本当にこの国の先行きに不安を感
じる結果だったと思います。
大阪府・太田知事に対して、横山知事が当選した時と同じ思いを持っ
ています。あれだけの協力体勢をバックにしては、逆にいろんなとこ
ろの言うことも呑んでいかねばならないことも多いでしょうし、結局
は財界の言いなりになる場面が多く見られるのではないかと思います。
さきほど事務所でのインタビューでも、中小企業の街の大阪を活気づ
けることにも言及していました。しかし、これまでと同じ政治をして
いては、あじさか候補への票としてあげられた「批判票」に応えられ
ないのは明らかです。ぜひ、「数の論理」だけで押しとおす中央の政
治を踏襲することなく、府民の全ての声に耳をかたむけていただきた
いと思います。そしてこれは横山知事の時にやはり書いたことですが、
弱者切り捨てゼネコン大企業重視の「冷たい府政」をいくらかでも改
善していただけることを期待します。女性知事に府民が期待したもの
は、やはり前知事が公言しながらまったく実現してくれなかった「府
民へのやさしさ」ではないかと思いますので、それが、今回の選挙の
結果で大阪府民に後悔させない新知事の責任だろうと思います。
ところで、京都市長に当選した桝本氏の「自分への票が京都市民の良
識だ」というのはちょっと暴言ですね。では自分に入れなかった市民
には良識がないのか、ということになります。こんな市民をバカにし
た発言はありません。きちんと批判票は批判票として受け止めてもら
わないと、京都市民はこれから4年間後悔し続ける結果となることで
しょう。
My Opinion
まさに世紀末!2000年度始まる(2000/4/2記)
いよいよ西暦2000年の4月になりました。20世紀最後の年度になった
途端に自自公は分裂するわ、火山は噴火するわと波瀾の幕開けですが、
この4月は私たち医療関係者にとっては非常に大きな変化の時でもあ
ります。
まずは皆さんご存知の介護保険制度がスタートしたこと。この制度
は決して理念的に悪いものだとは思いません。これから社会問題にな
って来る介護問題を国の制度として捉え、保険料を積立することで介
護を受ける際に不安にないようにする、というのがもともとの理念の
はず。しかし、現実にここまで制度化されたものを見ていると、認定
の基準が正当とは思えない上に、せっかく認定されてもその際の利用
料の自己負担が1割と高くて払えないことで、結局は必要な介護が受
けられない人が続出するであろうことは明らかです。しかも本当に必
要な介護を受けられる背景としての施設やサービスがまったく充実し
ていない。こんなに片手落ちのままこれほど大きな制度が見切り発車
してよいものでしょうか。医療従事者としてここには大きな不安を感
じます。
それと、もう一つの大きな変化は、診療報酬システムの改変です。
報道では実質数%のアップになると言われていますが、少なくとも私
のたちの病院クラスでは今のままでは確実に赤字が増えます。しかも、
もう病院は外来機能はなくてもよい、入院だけでよいと言わんばかり
の外来診療報酬の引き下げになる変更があります。法律で外来はする
なとはいえないので、外来をしていては赤字が増えるばかりと言う体
系にしてあるわけです。診療所では確かに外来報酬は増えるようにな
っています。しかし、介護保険サービスまで引受けている我々の診療
所では、介護保険導入による収入減が著明です。このように「真面目
にやろうとすればするほど」これからも医療機関の冬の時代がさらに
続くわけです。
しかし、皆さんにこういった事態に対して意思表示をする機会がな
いわけではありません。それが今年確実に行われるであろう衆議院の総選挙です。ぜひ今回のような事態を改善するためにも総選挙では国民
の確固とした意思表示を行い、真に国民のことを考えている候補者、
政党を選んでいただきたいと心から思っています。
My Opinion
衆議院解散、いよいよ総選挙!(2000/6/4)
一昨日衆議院が解散され、25日の選挙に向けての各党の丁々
発止が始まりましたね。日曜日朝のNHKの政治討論会では
、今の各党首脳の考え方がよく判ってとても面白いです。出
演するのはそれぞれの党首ではなく、幹事長、あるいは書記
長クラスのナンバー2ですが、このあたりの議論が一番激し
くていいですね。
自民党の野中幹事長はなんだかんだ言いながら共産党攻撃と
、民主党に共産党との協力のレッテルを貼ることに終始して
います。如何にこの二つの党に対して自民党が脅威を抱いて
いるかがよく判ります。また、自由党としてつい先日まで自
民党と一緒に協力していた自由、保守の二つがそれぞれの態
度を罵倒して目くそ鼻くその闘いをしています(失笑)。公
明党は一生懸命無理をして自民党に合わせている。むしろ共
産党はあそこまで言われながらよく抑えて冷静に話をしてい
るなと思うくらいです。
豊中診療所は民医連に属しており、所長としても国民の、ひ
いては多くの患者さんの権利と利益を守る立場での政策を唱
えるところを基本的には支持します。選挙前ですのでここで
どことか誰とかは書くつもりはありませんが、上でも書きま
したが、自民党首脳は民主党に対しては、とりあえずそんな
ことを民主党の側からは何も言ってないのに共産党との協力
、連立政権の事を民主党の規定路線であるかの如くに決めつ
けているし、一方共産党に対してもあまりにも口汚くののし
りすぎ(かつて党が暴力革命を図ったと断じ、そんな綱領を
変えていないのが問題だと言うが、綱領に暴力を肯定するこ
とはどこにも書いてないので大ウソです)だと思います。少
なくともしっかり政策論議をせねばならぬ場所でこのような
喧嘩の突っかけしかできない自民党だけはまったく信頼でき
ないし、政権の継続をさせてはいけないと思っています。
きたるべき総選挙では国民の確固とした意思表示を行い、真
に国民のことを考えている候補者、政党を選んでいただきた
いと心から思っています。
悪魔のポスト?(2000/8/1)
昨今の国会では肝心の国民のための政治がなかなか進まないですね。
今回もさっそく久世金融再生委員長の不祥事が明るみにでて、その更
迭とともにまたぞろ森首相の任命責任追求が起こり、そして首相は紙
に書いた同じ答弁をなんとかの一つ覚えのように繰り返すのみ。なん
だかニュースを見ていてやりきれない気持ちになります。
なんでこの国のトップはこうなんだろ?
今回の久世氏の任命について、登用前に首相がその不祥事の可能性を
知っていたかどうかというのが任命責任追求にあたっての論点になっ
ているみたいですが、そもそもこの「金融再生委員長」というポスト
自体、なにかえたいの知れない悪魔的なものを秘めているのではない
でしょうかね。というのもご存知の方も多いと思いますが、このポス
ト実に昨年から立て続けに3人、なんらかの不祥事やら問題発言やら
で辞任、更迭ということになっているのです。長くて2ヵ月半、そし
て今回の久世氏にいたっては最短で何と27日という短い任期でした。
日本の金融問題を立て直す最高責任者という立場である以上、当然そ
こへの「適材適所」を考えるなら金融畑でずっと仕事をして来た人が
いいに決まっています。いくら首相が登用したからといってまったく
の金融シロートを任命したら他の人が黙っていないでしょう。という
ことは多くの金融機関あるいはそのトップ人脈とのつながりは当然あ
るはず。そういった人材が次から次へと問題を起こすということは、
逆に考えれば日本の金融界の頂点ではこんな事が当たり前になってい
るということではないかという気さえします。
普段から大きな金を大きな単位で扱うことに慣れきっていて、庶民的
な金銭感覚がなくなってしまているのではないでしょうか。でも、本
当に国民の生活を向上させるために経済に渇入れをするつもりならそ
れでは困ります。こういうところにこそ真に国民の立場に立てる人を
ぜひ登用していただきたいものだと思います。
それが真の「適材適所」というものでしょう。
いよいよ新世紀ですね!
いよいよ新世紀となりました。皆さまはこの新世紀の幕開けをどのように
お迎えになりましたでしょうか。
新世紀というのはとても希望にあふれた、素晴らしい言葉です。その昔、
きたるべき21世紀ということで、リニアモーターカーだとか、あるいはロボ
ットだとかといろんな夢を描いた記憶をお持ちの方も少なくないと思います。
そしてそのいくつかは実現、あるいは実現の直前まで来ていますし、コンピ
ュータや携帯電話などのIT機器などでは予想を上回る発展を遂げて来てい
ると言っても過言ではないでしょう。
しかし、ひるがえって日本の医療情勢はどうなったかを考えますととても
安穏とはしておれません。この元旦から始まった老人医療の定率有料化は、
あの黒田革新府政が20数年前に勝ち取った「老人医療制度」をまさに根本か
ら覆すものです。しかも厚生省は「これでやっと元に戻せた」との発言。住
民の願いとして勝ち取ったはずの制度も厚生省にとっては単なる鬼子だった
わけですね。そしてまたこれを手始めに、いろいろな医療「改悪」が企まれ
ているとの由です。
けれど、この新世紀をこれから生きていく(今は)若い人達のためにも、
老人医療無料化はなんとしても取り戻しておかねばならない大事な国民の権
利だと思いますし、これ以上の改悪は絶対に阻止したいと思います。そのた
めにも患者さん皆さま方の、「住民パワー」という大きな大きなお力が必要
です。私たちも目一杯頑張りたいと思いますので、どうかよろしくご協力の
ほどお願い申し上げて、新世紀初頭の御挨拶とさせていただきます。
未来像なき負担増
これは今日(2000/12/1)の朝日新聞1面の大見出しです。11月30日の夕方に参議
院本会議で可決されて、医療保険制度「改正」関連法が2001年1月から施行される
ことになってしまいました。
医療保険財政が赤字であるということが理由になっての利用者負担増は、健康
保険本人の1→2割負担、国民健康保険本人の2→3割負担、そして老人医療
無料の廃止による定額制導入と次々進められて来ましたが、今世紀最後になっ
ていよいよ老人医療は完全に有料化に戻ってしまいました。一応診療所ではこ
れまで通りの定額制(ただし1回800円に引き上げ)も選択できますが、中規模
以上の病院では上限5000円の1割定率と相当な負担増になることが決まってい
ます。
しかし、民主医療機関である我々はこのような事態に対して基本的に反対の立
場を取っていますが、実際の患者さんの声はどうなのかを今日の診療所夜診の
患者さんに拾ってみましたが、患者さんの立場では賛成だとか反対だとか言う
前に、
「そんなことならちょっとくらいの風邪や腹痛やめまいなら医者にかからず様
子見てんとアカンね。ほんで徹底的に悪ぅなって初めてかかるっちゅうことに
なるやろなー」
という極めて現実的なお返事がほとんどでした。ここにはすでに今の政治に対
してちょっとくらい意見言うてもアカンわと言う諦めも見え隠れしますが、特
に慢性疾患を管理する私たちの分野では聞き捨てならない意見だと考えていま
す。
高血圧・高脂血症・糖尿病などの慢性疾患では、定期的な受診、検査、きちん
とした継続加療がなにより重要で、それによって慢性疾患をもっていてもそれ
以上の合併症や続発症を防ぐことができます。ところがここにこのような事態
での受診抑制がかかると、結果として続発症としての脳卒中、心筋梗塞、そし
て進行癌が増えて、そういった疾患に対する急性期医療は、慢性の際の医療に
比べて数段医療費が余分にかかります。結局は医療費を抑えるつもりが帰って
増やす結果にならんとも限らない、いやきっとそうなるだろうと思われるので
す。こういうことは厚生省はどのように考えているのでしょうか。そして皆さ
んはどのようにお考えになるでしょうか・・・??
いずれにせよ泣いても笑っても来年1月から実施されてしまいます。当面は何
が一番診療所を危うくすることなく患者さんの不利益にもならないか、を早急
に議論することから始めねばならないでしょう。ゆっくりはしていられないで
すね・・・
指導に困る・・・
(2001/1/28)
この間世間では、あの成人式事件を筆頭に、実にいろいろな、「TVタックル
風」に言えば「なーにやってんだか」的な事件が多くありましたねぇ。本当に
田嶋先生じゃないけど「日本はどうなってくんだ」て言いたくなるような。そ
んな中で、あの新大久保駅での事件はどっちかと言えば「まだまだ日本人もす
てたもんじゃねえよ」て感じ。だけどその主役は韓国からの留学生だったわけ
ですが・・・
巻き添えで亡くなった二人の行為があまりにも英雄的で、特にあの留学生の追
悼式には森総理まで訪れたそうな。彼のHPに14万件ものアクセスがあった
り、見知らぬ人々からモノが届けられたりと大変な事になっているようです。
彼のお父上も「死んでみんなに感動を与えたのだから死は決して無駄ではなか
った。・・・息子の行動を誇りに思う事で自分の気持ちもいやされます」との
コメントで、毎日新聞によれば「日本列島が涙を流した」と・・・
韓国の金大統領からも弔電が来て、なんだか彼の死が日韓友好の要になるてな
所まで話が大きくなっています。でもさすがにここまでになって来ると、「ち
ょっと待てよ」と言いたくなって来るのは私の悪いクセかな。
あまり大きくは報じられませんが、彼の母親からは決してそんな発言がありま
せん。「こんなに早く死んでしまうなんてあまりに悲しすぎる」「ホームの下
に少しでも退避場所があれば・・・」と悔いる言葉ばかり。これが当たり前の
反応です。父親だってきっとそのように言いたいに違いありません。でもこん
なに問題が大きくなって、英雄に「祠り上げられて」あんな風に言うしかなか
ったのではないかと言う気がします。この図式、どこかで見たことがあります
よね。そう、あの忌まわしい世界大戦でお国のために死ぬ事で神に祠り上げら
れた「英霊」の肉親たちの言葉がまさにそうだった筈なのです。
こんな事件があると、子供への指導に困ります。人助けをするなとは言わない
ですけど、果たして自らの命を投げ出して他人を助ける行動を、これが人間の
道だと言って教えるべきなのでしょうか。自らがその場に居たとしたら、一人
を助ける行動で自分がいなくなると自分がなすべきもっと多くの人たちの幸福
(私の場合でいえば「多くの人の健康」となりますか)のための行動ができな
くなる、と考えてしまわないだろうか、そんな風に考えて身体が動かないので
はないだろうか、そういう思いが先にたってしまい、とても確信をもって「殺
身成仁」なんてかっこいいことは言えないと思うからです。
こういう思いを持つのって、医療人としては「よくない事」なのでしょうか・・・
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