MyOpinionBackNumber No.3


「責任」は誰が問われるべきか

 イラク戦争開戦から1年が過ぎ、あと2ヶ月(期限は6月30日)でアメリカもイ
ラクに主権を譲渡するときが迫っています。こんなときだというのに、いまだファル
ージャを中心としてイラクは明らかに戦闘状態にあり、そしてその大きな影響を受け
てあの日本人5名の人質事件が起こったと言えるでしょう。

 当初テロかと言われていたこの事件ですが、拉致したグループの要求はあくまで自
衛隊の撤退であり、しかも自分たちが拘束した日本人たちが一番イラクのことを考え
て行動していたメンバーであり、あるいは自衛隊に対しても撤退するべきと考えてい
る人々であると判った段階で危害も加えず結局は無傷で解放してきました。人質を取
るという手段自体は卑劣な行動であり、許されることではないと思いますが、あくま
でイラク国民の心情を反映した行動だったのではないでしょうか。

 ところで、この身柄拘束された5人に対して、もちろんその生命を救わんと共感
し、行動した国民は多かったのですが、一方でもとよりイラクへ行かない勧告が出て
いることを無視して自らの気持ちで行ったのだから、そこには自己責任が伴うという
意見を持った方も多かったと思います。もちろんこの意見は大事なことだと思います
が、それが事件が解決の方向に向かうに従って急速に、この5人に対するバッシング
という形で大きくなってきたということは非常に哀しく残念なことだったと思います。

 こういった活動をする人々の行動に対して自己責任でやるべきだという意見が国民
側から出るのは私は当然だと思いますし、そしてまたあの5人とも、その言葉は充分
理解して活動を行なっていたと思います。ロバート・キャパや沢田教一といったフォ
トジャーナリストは、それを覚悟して多くの戦争の最前線での写真を残し、そしてい
ずれもその仕事の中で命を落としていますが、あの5人がキャパや沢田と気持ちが異
なっていたとは思えません。しかし二人の写真家の仕事も、あるいは今回の5人が携
わって来ていた仕事も、社会的には非常に大きな意義があるということは衆目の認め
るところだと思います。

 
こういった人にはできない仕事をしていたこと自体は、国として、あるいは国民全
体として誇ることはあっても非難されるようなことではないのではないかと思うので
す。
しかし、今回の事件が快方に向かったとき、総理や官房長官は感情をあらわにし
て彼らの行動が「迷惑だ」「もっと考えて行なえ」と非難し、更に続ける意志がある
のなら「亡命してもらうしかない」と切り捨てたのです。政府がこんな反応をすれば、
自己責任論を強く感じている国民も5人に対し当然非難をするでしょう。これが急速
に起こったバッシングだったのではないかと思っています。

 しかし、諸外国のメディアはごく客観的に事件を見ていて、あれほど「国にとって
も誇れる仕事をした」人たちを何故そんな風に言うのか理解できないと素直に感想を
述べ始めています。諸外国ではこんな事件の場合、「政府に対策本部を置く」ような
行動はとらないけれど、それはそう言った危機管理への対応が
「当たり前の仕事とし
て」行なわれるから
だと思います。日本政府はそもそも準備ができてなかったから対
策本部を置かざるを得ず、それが「迷惑をかけられた」と言う意識にまず繋がってい
るのでしょう。それはかかった費用が莫大であったと言う中の説明に「外務副大臣が
何度も足を運び、大使館員もたくさん動かした」というものが上げられていたことか
らも判ります。だってそう言うことへの対応は外務副大臣や大使館員の「正規の仕事」
の一つではないですか。特別な仕事をしたという意識自体がおかしいと思うのです。

 けれど、政府が一番「迷惑だ」と感じたのは、この事件で自衛隊派遣問題に絡めて
自分たちの立場が危うくなりかけた、まさにそのことではなかったのでしょうか。そ
もそも当初より「人道支援」をするというのなら、自衛隊にこだわらず早くから高遠
さんらがやっておられたような支援を政府自ら始めておけば彼女たちが行かねばなら
ないと思うこともなかったはず。さらにもっとそもそもを言えば、この言われなきイ
ラク戦争をブッシュ大統領が始めていなければこんな事態は最初からなかったはずな
のです。

 

いったい、責任を問われなければならないのはどちらなのでしょうか。
今一度わが国の偉い人たちには考え直していただきたいと強く主張します




WHO世界禁煙デーに際して
              〜豊中医療生協からのアピール

去る5月31日は、WHO提唱の世界禁煙デーでした。世界禁煙デーは、た
ばこを吸わないことが一般的な社会習慣となるよう、加盟各国で様々な対策を
行うために、1988年に設けられました。毎年、WHOの定める標語に沿っ
て各国で活動が繰り広げられています。2003年の標語は

「たばこと無縁の映画やファッションへ行動を。」

つまり、もうすでに世界はタバコに関しては「減らす」とか「控える」
というレベルではなくて、「根絶」の方向へ動き出しているわけです。

ところで、わが国においては『生活習慣病の予防を実効性のあるものにする』
目的で2000年に制定された「健康日本21」、そしてその実践に際しての方法
を定めて昨年交付され、今年5月1日から施行された『健康増進法』に、たば
こと健康に関する国としての取り組みが規定されているわけですが、それに対
してはこんな風に厚生労働省からコメントが出ています。まず「健康日本21」
に関しては
(1)喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及
(2)未成年者の喫煙の根絶
(3)公共の場や職場での分煙の徹底及び効果の高い分煙についての知識の普及
(4)禁煙を希望する者に対する支援プログラムの普及
について具体的な目標を立てて推進している、との由。
そして「健康増進法」に関しては「喫煙に関する正しい知識の普及、受動喫煙
を防止するための措置、生活習慣相談(禁煙支援を含む)などについての規定
を盛り込ん」だということになっています。健康増進法では特に受動喫煙に関
して、「多数の人が利用する施設においては施設の管理者は受動喫煙の防止に
努めなければならない」という規定を定めました。

一見よく頑張って作られたように見える法律ですけれど、よく考えれば日本政
府のこの法律に明確に示された姿勢はあくまで「喫煙容認」なわけで、喫煙者
が普通にいることを前提としてそれにどう対処するか、を決めたに過ぎず、い
かに日本からタバコを根絶するか、ということは全く記載されていません。

タバコのパッケージに書かれた文言が、昨今においては世界のどの国において
も「タバコはあなたの健康を害する」という断定的な内容で、それも大きくよ
く見えるように書かれているのに対して、日本ではパッケージの横にこそっと
「あなたの健康を損なう恐れがありますので、吸いすぎに注意しましょう」と
あるだけです。これはすなわち「健康を損なわない可能性もある」「吸いすぎ
なければ大丈夫」と喧伝しているわけで、タバコ事業法でタバコ事業を発展さ
せることを政府がすすめている以上、政府自らこの喧伝を認めているわけで
す。これではせっかくできた健康増進法も全くの骨抜きだと言われても仕方が
ないことではないでしょうか。

世界禁煙デーを迎えるに当たり、あらためて豊中医療生協、豊中診療所として
はすべての住民の皆さんに下の内容で提起します。

(1)喫煙は確実にあなたの健康を害します
(2)喫煙は確実にあなたの周りの人の健康も害します
(3)今のあなたの健康を守るためだけでなく、未来の
   すべての人々の健康を守るために「タバコのない
   世界」を実現しましょう!

皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます