大阪民医連 高血圧の治療指針(2009) |
原案;高血圧追跡調査会東京委員会で作成 1999.5.22
参考:日本高血圧学会 JSH2009 2009/1
【血圧はなぜ下げなければならないか】
脳卒中や心臓病の主要な原因の一つが高血圧であり、血圧を下げれば脳心事故が減ることが明確になってきた。血圧は本来、低ければ低いほどよいという考え方
- the lower the better - が確立された。そして、ライフスタイル改善と共に、より早期からの降圧治療が推奨される。
【JSH2009の血圧分類(2009)】
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
至適血圧 | <120 | かつ | <80 |
正常血圧 | <130 | かつ | <85 |
正常高値血圧 | <140 | かつ | <90 |
I度高血圧 | 140−159 | または | 90−99 |
II度高血圧 | 160−179 | または | 100−109 |
III度高血圧 | ≧180 | または | ≧110 |
【治療の開始】 JSH2009では下記のような降圧目標が明確にされている。糖尿病、CKD(慢性腎疾患)、心筋梗塞後では目標が厳しい
診察室血圧に基づくリスクの層別化を行い、それに基づいて治療開始の基準を設けている
【合併症による積極的適応】
合併症
|
推奨薬剤 | |||||
利尿薬 | β遮断薬 | ACEI | ARB | CCB | Aldosterone拮抗薬 | |
心不全 | ● | ● | ● | ● | ● | |
心筋梗塞後 | ● | ● | ● | |||
冠動脈疾患高リスク | ● | ● | ● | ● | ||
糖尿病 | ● | ● | ● | ● | ||
慢性腎疾患 | ● | ● | ● | |||
脳卒中再発予防 | ● | ● |
【生活習慣修正】
修正 | 推奨 | 期待される収縮期血圧低下効果 |
体重減少 | BMI 18.5-24.9を維持 | 4-5 mmHg/5kg減少 |
DASH食 | 多めの果物、野菜と飽和脂肪酸が少な目の低脂肪食品 | 6-8 mmHg |
減塩食 | 塩分(NaCl)5-7g/日 | 4-5 mmHg |
運動 | 1日30分以上の有酸素運動(歩行を推奨) | 4-9 mmHg |
節酒 | 日本酒1合(ビール350ml)/週休2日 | 3‐4 mmHg |
【降圧剤治療の原則】
(1)単剤もしくは併用使用を目的に最初に投与すべき降圧薬は、Ca拮抗薬(CaB)、アンジオテンシン受容体阻害剤(ARB)、ACE阻害薬(ACEI)、利尿薬(DU)、β遮断薬(BB)の中から選択
(2)積極的な適応や合併症の有無に応じて適切な薬剤を選択する
(3)降圧薬は1日1回投与を原則とするが、24時間にわたって降圧する事がより重要であるため、1日2回の分割投与が好ましい場合もある
(4)降圧目標を達成するためには多くの場合2-3剤の併用が必要になるが、その際は積極的に少量利尿薬を併用すべき
(5)2剤併用として推奨されるべきは
(a)ARBorACEI+CaB (b)ARBorACEI+DU
(c)CaB+DU (d)CaB+BB
(6)特に高齢者など、一般には緩徐な降圧が望ましいが、III度高血圧や多重危険因子保有など高リスク症例では数週間以内に速やかに降圧目標を達成することが望ましい
特に糖尿病と慢性腎疾患の場合の方針を下記に示します
【仮面高血圧、白衣(イベント型)高血圧】
【誕生月と半年目の定期検査を勧める】
最低半年毎に(可能なら年3−4回)全身チェック検査を行い、合併症の伸展や癌を見落とさない。
一般検尿、尿中塩分測定、全血生化学(全身チェック項目)、HbA1c(DM合併時)、胸部写真、心電図。 便潜血、腹部エコー、胃カメラも推奨。各自治体の健診制度も有効利用する |
* 胸部写真や心電図で心肥大、STT変化あれば標的臓器障害。徐脈ならβは中止。頻脈ならβを。
* シンドロームXと言われるように高血圧には肥満、高脂血症、糖尿病が多い。どうなっているか。
* 電解質では低K血症に注意。利尿剤の他、ネオユモール、漢方薬が原因になる。
* 多血症Ht50%以上に注意。梗塞の誘因。喫煙、高脂血症、肥満、ストレス、水分摂取の是正を。
【減塩指導のために、1回尿の尿中Na,K】
摂取Na,Kは尿に排泄される。Na 170mEq は塩10gに相当。KはNaとペアで働き、降圧効果あり。
* Na 140mEq/l (推定10g/day) 以下、K 40mEq/l以上、Na/K= 3.5以下、を指導。
【高血圧アイテム】
定期検査を勧める掲示板、診察室にWHO血圧分類表、血圧手帳(外来値記載)、家庭血圧記載用紙、家庭血圧計は上腕型を推奨、町の薬局で。患者会。